高良留美子「ニュータウン」

洋服を着た女のひとが
歩いている。
買物籠も乳母車も歩いている。
石でかためた
地面、
これは道と呼ばれているものだ。
わたしが一緒に暮しているひとも
自分の名前をもっているらしい。
時折そんな名前が呼ばれて
黒い受話器のむこうから
わたしの知らない世界がやってくる。