北村透谷「蝶のゆくへ」

舞うてゆくへを問ひたまふ、
  心のほどぞうれしけれ、
秋の野面をそこはかと、
  尋ねて迷ふ蝶が身を。


行くもかへるも同じ関、
  越え来し方に越えて行く。
花の野山に舞ひし身は、
  花なき野辺も元の宿。


前もなければ後もまた、
  「運命(かみ)」の外には「我」もなし。
ひら/\/\と舞ひ行くは、
  夢とまことの中間(なかば)なり。