ジョン・バージャー『イメージ――Ways of Seeing 視覚とメディア』(伊藤俊治 訳)

 簡単に言えばこう言えるかもしれない。男は行動し、女は見られる。男は女を見る。女は見られている自分自身を見る。これは男女間の関係を決定するばかりでなく、女性の自分自身に対する関係をも決定してしまうだろう。彼女のなかの観察者は男であった。そして被観察者は女であった。彼女は自分自身を対象に転化させる。それも視覚の対象にである。つまりそこで彼女は光景となる。
 西洋の油彩画の一部門において、女性は絶えず繰り返される主要な主題である。つまり裸体画だ。そしてこの裸体画において、我々は女性が光景として見られ、判断されるに至った規準や慣習を発見することができる。