ウォーラーステイン『近代世界システム』(川北稔 訳)

 しかし、奴隷制はいかに大規模な経営形態をとったとしても、熟練を要する職種では役に立たない。奴隷というものは、強制されたこと以外には何もするはずがないからである。少しでも熟練が必要な職種では、別の形態の労働管理を考えた方が経済的である。というのは、奴隷制のままでは、なるほどコストは低いかもしれないが、生産性も極度に低くなるからである。本当の意味で労働集約的といえるのは、「収穫」にほとんど熟練を必要とせず、したがって労働管理にほとんど経費のかからない生産物である。砂糖とのちの綿花がこの条件に適った主要な作物であり、この二つの作物こそは、未熟練労働者を結集してこれを苛酷きわまりない監督のもとにおくのに、重要な役割を果たした。