王漁洋「樊圻の畫(はんきのぐゎ;樊圻畫)」(全) (橋本循)

蘆荻花なく秋水長し
淡雲微雨、瀟湘に似たり
雁聲搖落、孤舟遠し
何の處の青山が是れ岳陽


ろてきはななくしうすゐながし
たんうんびう、せいしゃうににたり
がんせいえうらく、こしうとほし
いづれのところのせいざんがこれがくやう


蘆荻無花秋水長
淡雲微雨似瀟湘
雁聲搖落孤舟遠
何處青山是岳陽


 蘆(あし)や荻の花も散って、秋水が果てなくひろがっている。うすぐもりの空、細い雨、いかにも瀟湘地方の風景に似ている。空からは雁(かり)の声が凋残の秋の気を伝え、一つ小舟は、だんだん影が遠く小さくなってゆく。さて、あの青山のどの辺が、岳陽楼であろうか。