屈原「離騒」(『楚辭』より)(抄) (藤野岩友)

世溷濁して分かれず。
好んで美を蔽ひて嫉妬す。


よこんだくしてわかれず。
このんでびをおほいてしっとす。


世溷濁而不分兮
好蔽美而嫉妬


おもえば、世は乱れ濁って善悪の区別もつかず、好んで人の美点をおおい隠して嫉妬している有様だ。

世溷濁して賢を嫉み、
好んで美を蔽ひて惡を稱ぐ。


よこんだくしてけんをねたみ、
このんでびをおほいてあくをあぐ。


世溷濁而嫉賢兮
好蔽美而稱惡


ああ、どこも同じで、世の中は濁り乱れて賢明な人をねたみ、好んで人の美点をおおい隠して弱点をとりたてていう。