李白「酒を把って月に問ふ(さけをとってつきにとふ;把酒問月)」(抄) (青木正兒)

青天 月有って來幾時ぞ
我 今 盃を停めて一たび之を問ふ。
人が明月を攀づるは得可からず
月行 却て人と相隨ふ。


せいてん つきあってこのかたいくときぞ
われ いま はいをとどめてひとたびこれをとふ。
ひとがめいげつをよづるはうべからず
げっかう かへってひととあひしたがふ。


青天有月來幾時
我今停盃一問之
人攀明月不可得
月行却與人相隨


青天(あおぞら)に月が有ってこのかた幾歳になるであらう、自分は今、盃を停めて一たび之を問うてみる。人が明月をよぢ登ることは出來ないのに、月の運行は却って人と一緒に歩く。