李白「酒を將げ進む(さけをささげすすむ;將進酒)」(抄) (青木正兒)

君見ずや高堂の明鏡 白髮を悲しむ
朝には青絲の如く暮には雪と成る。
人生 意を得て須らく歡を盡すべし
金樽をして空しく月に對せしむる莫れ。


きみみずやかうだうのめいきゃう はくはつをかなしむ
あしたにはせいしのごとくくれにはゆきとなる。
じんせい いをえてすべからくくゎんをつくすべし
きんそんをしてむなしくつきにたいせしむるなかれ。


君不見高堂明鏡悲白髮
朝如青絲暮成雪
人生得意須盡歡
莫使金樽空對月


君見ずや高堂の曇りなき鏡に映して悲しむ白髮(しらが)も、朝には青絲(くろいと)の如くであったのが暮には雪の如く成ったのではないか。人生は心まかせにして須(すべか)らく歡樂を盡すべきだ、金樽を空しく月に照らさせておいてはならぬ。