韓愈「興を遣る(きょうをやる;遣興)」(全) (原田憲雄)

一生を斷送するに 惟だ酒のみ有り
百計を尋思するに 閑なるに如かず
憂ふる莫れ 世事と身事とを
須らく人間を著って夢間に比すべし


いっせいをだんそうするに たださけのみあり
ひゃくけいをじんしするに かんなるにしかず
うれふるなかれ せいじとしんじとを
すべからくじんかんをとってむかんにひすべし


斷送一生惟有酒
尋思百計不如閑
莫憂世事兼身事
須著人間比夢間


一生を洗い流してくれるのは ただ酒だけだ
あれこれ考えてみるけれどのんびり過(すご)すにしくものなし
世間のことも 身の上も くよくよするな
人間世界も夢の中と思えばいいさ