白樂天「井底引銀瓶(せいていいんぎんぺい)」(抄) (田中克己)

君が一日の恩のために
妾が百年の身を誤る。
言を寄す癡小人家の女に
「愼みて身をもって輕しく人に許すことなかれ」と。


きみがいちじつのおんのために
せふがひゃくねんのみをあやまる。
げんをよすちせうじんかのぢょに
「つつしみてみをもってかろがろしくひとにゆるすことなかれ」と。


爲君一日恩
誤妾百年身
寄言癡小人家女
愼勿將身輕許人


ほんとにあなたのたった一日のお情けで
わたしは一生をだいなしにしてしまった。
世間のおろかなわかいむすめたちにいってやりたいことは
「注意して自分の身を軽率に他人にまかさないように」と。