韓愈「孟東野 子を失ふ 并に序(まう・とうや こをうしなふ ならびにじょ;孟東野失子 并序)」(抄) (原田憲雄)

子有りとも 且つ喜ぶ勿れ
子無きも 固より歎ずる勿れ
上聖は教を待たず
賢は語を聞きて遷る
下愚は語を聞いて惑ひ
教ふと雖も悛むるに由無し と


こありとも かつよろこぶなかれ
こなきも もとよりたんずるなかれ
じゃうせいはをしへをまたず
けんはごをききてうつる
かぐはごをきいてまどひ
をしふといへどもあらたむるによしなし と


有子且勿喜
無子固勿歎
上聖不待教
賢聞語而遷
下愚聞語惑
雖教無由悛


子ありとて喜ぶことなかれ。
子なしとて歎かふなかれ。
至れる聖(ひじり)は、教へらるるを待たず。
賢(さか)しきは、語(ことば)を聞きてよきにうつる。
くだりて愚かなるは、語(ことば)を聞きていよいよ惑ひ、
教へらるるも改むるによしなし」