王漁洋「江上(かうじゃう)」(全) (橋本循)

呉頭楚尾、路如何
煙雨秋は深くして白波暗し
晩に寒潮を趁うて江を渡って去けば
滿林の黄葉、雁聲多し


ごとうそび、みちいかん
えんうあきはふかくしてはくはくらし
ばんにかんてうをおうてかうをわたってゆけば
まんりんのくゎうえふ、がんせいおおし


呉頭楚尾路如何
煙雨秋深暗白波
晩趁寒潮渡江去
滿林黄葉雁聲多


 秋も深くなって、その上に雨は煙のように降り、長江の白波も、日の暮れで、ほのかにそれとわかるだけだ。江南(呉頭楚尾)道中の風景は、どんなことであろうか。と思いつつ晩に寒潮に乗って、江を渡って出かけたが、空からは雁の声が聞こえてくるし、地には満林の黄葉であった。