韓愈「仕に從ふ(しにしたがふ;從仕)」(全) (原田憲雄)

閑に居れば 食ふもの足らず
仕に從へば 力 任へ難し
兩事 皆 性を害す
一生 恆に心を苦む
黄昏 私室に歸り
惆悵して歎音を起す
人間の世を棄置せむに
古來 獨り今のみに非ず


かんにをれば くらふものたらず
しにしたがへば ちから たへがたし
りゃうじ みな せいをがいす
いっせい つねにこころをくるしむ
くゎうこん ししつにかへり
ちうちゃうしてたんおんをおこす
じんかんのよをきちせむに
こらい ひとりいまのみにあらず


居閑食不足
從仕力難任
兩事皆害性
一生恆苦心
黄昏歸私室
惆悵起歎音
棄置人間世
古來非獨今


のんびりしてると食えないし
勤めに出れば身がもたぬ
どちらも衛生的でない
生きてるかぎりは苦しみだ
たそがれ下宿にたどりつく
ぼそぼそ嘆きが出るばかり
いっそ遁世したくなる
いまも むかしも おんなじだ