山田太一『逃げていく街』

 考えてみれば、観客の現実とたちまち照合され、そのリアリティを問われること、家庭劇に比べられるものはない。作者の現実観の甘さが、もっとも露呈しやすいのが家庭劇である。
 それは一方で観客の現実観をもためすのであって、ある年代に歓迎された家庭劇の成熟度で、その年代の市民の成熟度を計ることも出来るはずである。

   ※太字は出典では傍点