マリオ・ルーツィ「変身の暗き体内で」(抄)(河島英昭 訳)

・《人生は思索に応じてぼくらを思索の源から引き出し、
 人生は人生に応じて
 ぼくらを過誤と苦難に導き人生は不可能だ》
 夢の壁がぼくをまた送り返す
 目覚めて夢見た夢。《不可能だ
 生きることは、考えることも》 と書かれている


・――自分を見出したければ自分を失え、願うのは
 持たないためだ――


・《目を覚ませ、この沈黙はおまえが歴史と
 思いこんでいるような深い隠喩の
 精神の沈黙ではない。ただの醜い
 途絶えた音。死だ。死、それだけだ》


・《死はまた誕生いがいの何ものでもない
 ただそれだけのためにぼくは祈るだろう》


・《海を知っているつもりのきみにはわからない》
 とぼくに告げる、気むずかしげな無駄な叫び声


・《そのやさしさに目をふさぐな、いかなる追憶をも裏切る
  な
 ただ、おまえの旅をつづけよ。おまえの役割を果たせ。そ
  れが正しからんことを》


・《区別するな、分かつな。おまえに
 差し出されるままにおまえの善を受け入れよ》


・《おまえの嘆きは何と小さいことか》


《おまえは知らなかったのか、思い出さなかったのか、
 このように成熟した時代の
 苦しみを、おまえ以外のものを?》


《かすかに、かすかにしか、この追憶は値しない》


・そしてこの世の愛と苦しみの力を
 受け入れる。そしてさらに、さらにそれ以上のものを。


・――おまえに罪があるとかないとか思うな。
 それが問題なのではない。たとえ他の誰よりも
 おまえに冒瀆の心が起こったとしても――


・だが背後に、かつ最後に、不安の変貌が、
 その必要性が。そして病める魂はついには安らぎをもたな
  いばかりか
 安らぎを望まず、何の希望もなく、
 養育を拒み、命を拒む。


・希望――ぼくはほとんどそれを知らない。
 すでにその顔立ちを照らし出しているかもしれない
 そして映し出されれば思い出す
 あの樫の林の炎の雲を
 雪の斜面の少し上を。それでなければ、
 ぼくはつぶやく、さらにない。さらに何を知ろうか。