2011-05-29から1日間の記事一覧
飛ぶように過ぎて行く群衆の中に、一段と鮮やかに浮ぶ顔は、いったい、誰なのだ? ああ、そうだ、これらの顔! 私が、自分の胸にこの質問を発すると、みんな、一斉に私の方を向く!
この人生というものは、案外ついに起らないことが、結果においては、往々、起ったと同様、いや、それ以上の現実性さえ持つことがあること、それもよく考えてみた。
話し進むにしたがって、私は、だんだん彼女が、自分のことを、過去の形でしゃべっているのに気がついて、たまらなく心が痛む。
「つまり、欲と奸智という奴は、必ずきまってやり過ぎをやる、そして結局、策士、策に倒れるということなんだな。これは、君、大地を打つよりもたしかだ」
誰でも、今私のしているように、その一生を一ページ一ページ回想して、もしあとで、みすみす粗末にしてしまった数々の才能、むざむざ浪費して失った機会、さては、たえず胸の内で戦い合う気紛れ、邪(よこし)まな思いについに負けた、等々という鋭い悔いを残…
ところで、私たち誰でも、ときどき、こんな経験をすることがあるのではなかろうか? つまり、今言ったり、したりしていることが、そのまま遠い昔に言ったり、したりしたことででもあるかのような気がしてくる――そして、今周囲に見る顔や物や事情は、そのまま…
「君、世間を見たまえ。いいところもあれば、悪いところもある。教会法だって、その点同じことさ。みんな組織の一部分なんだからね。それでいいんだ。な、そうだろう!」
「つまり、よほどの理由でもないかぎり、どんなことにも、どんな人の意見にも、決して動かされないだけの強い人間になることなの。私の望むのは、ただそれだけ」
「まず自分自身に恥ずかしくないような人間になることね」
「あなたは、まだ年端もいかない子供だから、この世の中が、どんなに毎日変るものだか、また次々と人々が死んでゆくことなど、おわかりにならないだろうけどもね」とミセス・クリークルが言った。「やはり、わたしたちはね、そのことを知らなければならない…