2011-09-24から1日間の記事一覧

前田英樹「ゴダール的〈結合〉について」(「現代思想臨時増刊号 ゴダールの神話」所収)

仰向けに倒れたミシェルを、パトリシアと刑事たちとが取り囲んで見下ろす。ミシェルはかすかに笑いながら、パトリシアに「おまえは、ほんとに最低(dégueulasse)だ」と言う。彼女は、俗語のdégueulasseがわからず、刑事に「彼はなんて言ったの」と尋ねる。…

小谷真理「カルメンを殺した男」(「現代思想臨時増刊号 ゴダールの神話」所収)

もともと視覚がもっぱら男性的なものと手を結ぶオペラの舞台構成において、音楽とは要するに前テクストであり、通常「自然」のなかに抑圧され、目には見えない存在である点で、女性的なものと関連する。

多和田葉子「「新ドイツ零年」と引用の切り口」(「現代思想臨時増刊号 ゴダールの神話」所収)

むしろ、書物という、紙で出来た奇妙なオブジェは、スクリーンの上では消されるべき運命にある。それをゴダールがあえて大映しにするのは、引用が引用であることを目に見えるようにすること自体に重要な意味を認めているからに違いない。書物は、破壊された…

多和田葉子「「新ドイツ零年」と引用の切り口」(「現代思想臨時増刊号 ゴダールの神話」所収)

かけらは〈全体〉ではない。映し出されるかけらは、引用なのである。でも、かけらにはかけらならではの強い身体性がある。それとは対照的に、〈全体〉というのは概念であるから身体性に欠ける。だから、人文字、整列、大集会、行進などの形で、生きた人間の…