2013-02-28から1日間の記事一覧

『中庸』

世を遯(のが)れて知られざるも悔(うら)みず。 たとえ世間をさけて身をかくし、人々に知られないというようなことになっても、めぐりあわせをうらまず、人をとがめたりすることはない。君子が中庸をまもる態度について、孔子がのべたことば。

『荘子』

迹を絶つは易く、地を行く無きは難し。 はじめから足跡を絶って歩かないでいることはたやすいが、歩いてしかも大地をふまないでいることは難しい。俗世間をきらって人と交わらないことは難しくないが、俗世間に生きながら俗世間のあかにまみれず、しかも、自…

カミュ『異邦人』(窪田啓作 訳)

検事が腰をおろすと、かなり長い沈黙がつづいた。私は暑さと驚きとにぼんやりしていた。裁判長が少し咳をした。ごく低い声で、何かいい足すことはないか、と私に尋ねた。私は立ち上がった。私は話したいと思っていたので、多少出まかせに、あらかじめアラビ…

ジャン・ジュネ『泥棒日記』(朝吹三吉 訳)

わたしはこの日記のなかで、わたしを泥棒というものにしたほかのいくつかの動機を隠そうとは思わないが、そして、そのいちばん単純なのは食うためにということだが、しかしこのわたしの選択には、反抗心、怨嗟、憤懣、その他これに類する感情は何の役割も演…