2013-05-27から1日間の記事一覧

谷崎潤一郎『AとBの話』

僕は救われないから苦しいと云う、君は苦しんで居るから救われると云う。

井上靖『青衣の人』

人間の苦しみなんて大したものじゃあないよ。十日も気持がやられていることはめったにあるまい。どんなに大きい打撃でも十五日さ。半月で峠を越す。

田山花袋『妻』

金がありさえすれば先ず好い。餓えさえしなければ兎に角安心だ。この「兎に角安心」が非常に勢力がある。

マンスフィールド「小さい女の子」(崎山正毅 訳)

「さあ、お前の脚をお父さんの脚にすりつけて暖めなさい。」と父親はいった。 疲れきっているのか、父親は女の子よりもさきに寝こんでしまった。そのとき、女の子には、妙な感じがわいて来た。気の毒なお父さま! こうしてみると、別にとても大きいというの…

マンスフィールド「小さい女の子」(崎山正毅 訳)

父親が、手に定規をもって、部屋にはいって来た。 「罰だ、ぶつ!」と彼はいった。 「いや、いや!」と女の子は叫んで、夜具の下にちぢこまった。 父親は夜具をはねのけた。 「そこにすわりなさい。」と父親は命令した。「手を出して! これからは、いっさい…

マンスフィールド「ロザベルの疲れ」(崎山正毅 訳)

やがて夜が明けた。不意に、明けがたの冷気が彼女のむき出しの手の上にせまって来た――灰色の光がどんよりとした部屋に流れて来た。ロザベルは身ぶるいをし、小さくあえぐような息をして、おき上った。そして、まだすっかり目のさめないままに、口のまわりに…