2014-12-10から1日間の記事一覧

山本夏彦「何用あって月世界へ」

「何用あって月世界へ――月はながめるものである」という文章を、かねがね私は書きたいと思っていた。 そこで、こうして書いてみた。 「何用あって月世界へ」 これは題である。 「月はながめるものである」 これは副題である。 そしたら、もうなんにも言うこ…

山本夏彦「株式会社亡国論」

つかぬことを言うようだが、私は永年日本語を日本語に翻訳している。翻訳はもと外国語を日本語に移すことを言ったが、私は日本語を日本語に移すのである。 たとえば、いくら資本金が多くても、それが不動産会社なら「千三つ屋」と訳す。証券会社なら「株屋」…

北杜夫『どくとるマンボウ航海記』

夜、十一時に出航の予定だが、それまでは閑である。サード・オフィサー達は大使館のレセプションに行っており、この土地では夜一人で賭博場へ乗りこむ気もしないし金ももうあまりない。ただ本場のカレーだけは食べておこうと思って、ニホンホテルへ出かけた…