2015-06-30から1日間の記事一覧
「すべてが適当なところへ納まるようにぼくを欺いたのだ、すべてが。これこそこの生の行き止まりなのだ。そしてぼくは、その範囲内で救いを求めるべきではなかったのだ。救いを求めたなんて奇妙なことだ。現実には一度も手にしたことのないものを、夢のなか…
「ぼくの言葉はすべて一つの場所のまわりをただぐるぐるまわっているだけだ」
この世界にはぼくの言語を喋れる人間など一人としていないのだから。あるいは、もっと簡単に言うなら、喋れる人間など一人としていないのだから。あるいは、さらにもっと簡単に言うなら、人間など一人としていないのだから。
恐るべき〈ここ〉、そのなかに容赦なく呻吟する心が幽閉されている暗い監獄、この〈ここ〉がぼくを拘束し圧迫している。
あとでマルテは自分のことについてこう言うのだ(例によっていつも変わりなく一人称複数で)。「あなたに見られて、あたしたちとっても恥ずかしかったわ」と。
名前のないものは存在しないのだ。不幸にもすべてのものには名前があるのだ。 ※太字は出典では傍点