クロード・シモン『アカシア』(平岡篤頼 訳)

彼女は清純だったのではなくて、いわば性がなかったのだった。それはまるで、彼女のキャミゾール風ドレスがかくしている雪のように白い腹と、その下で太腿が左右に分かれているあたりのすべすべした茂みの秘めているものが、消化吸収と排泄という生理的機能以外のなにか、彼女の乳房が授乳以外のなにかに役に立とうとは、夢にも思いおよばないかのようなのだった。