クロード・シモン『フランドルへの道』(平岡篤頼 訳)

そこでおれがいいかげんにしてくれ!そういって起きあがったが彼女がおれをなぐったのでベッドにひっくりかえってしまいなおも彼女はなぐりつづけ、おれのすぐそばの彼女の顔からなにかどくどくというような音彼女が懸命にこらえようとする音が聞こえたしかはなして!と彼女がいったがまたこのひどい低劣な男、ともいいそこでおれなぜさ?すると彼女低劣だわ低劣だわどうしてあたしのことをそっとしておいてくれなかったのいままでに一度だってだれだってあたしを扱うのにこんな……、そこでおれ扱う?すると彼女ばかにした……あなたにとってはあたしは人間でもなんでもないんだわなんでもないよりもっとひどいもっと……、そこでおれなにもそんなに、すると彼女あたしはよ……あたしはよ……、そこでおれまあまあそう、すると彼女さわらないで、そこでおれまあそんなに、すると彼女さわらな……、そこでおれ送っていこう汽車なんかに乗らなくてもいいさ車でおれが送っていこうおれが、すると彼女ほっといてほっといて、となりの部屋でだれかが壁をこつこつたたいたので、おれは立ちあがって服をさがしながら畜生!といいどこかなおれの……といったが彼女がまた暗闇のなかでなにか堅いもので、ハンドバッグだと思うが、盲めっぽうにおれになぐりかかり、