福田和也『岐路に立つ君へ 価値ある人生のために』

 期待というのは、もっともなこともあるだろうけれど、どっちにしたって、程度の差こそあれ独りよがりなものだ。
 相手には、相手の都合があり、相手の思惑があるということを忘れている。
 そして、自分がこんなに望んでいるのに、相手は望んでいるようにしてくれない、と云って悩む。
 これはやっぱり下らないことだと思うんだ。
 思い切りざっくり云ってしまうと、他人を当てにしている、他人にないものねだりをしているだけの話だ。
 そして、僕は、いわゆる「悩み」というのは、ほとんどそういうものだと思う。
 他人が自分の願望を満たしてくれない、と云って、自分では行動を起こさないでいることが、「悩み」の本質だと思う。
 だから、それは下らない、というか無意味だ。
 他人に期待しないで、自分から行動を起こす人は悩まない。
 もちろん、彼はいろいろな困難に直面するだろう、あるいは彼は挫折するかもしれない。だけれども彼は悩むことはない。
 悩む人というのは、大体いつでも悩むんだね。いろいろな事態について、いつも悩んでいる。それはやはり、彼が悩む人、つまりは行動せずに期待ばかりしている人だからだと思う。