福田和也『岐路に立つ君へ 価値ある人生のために』
誰にでも、相応の努力をする人間には、機会というのはやってくるものだ。
大事なのは、その機会が来た時に、準備ができていること。
準備ができていなければ、折角機会が来ても、乗り損ねてしまう、取り逃がしてしまうことになる。
そして現実には、ほとんどの人が、準備がまったくできていないうちに、チャンスを迎えてしまう。そしてその失敗から、立ち直れないほどの痛手を受ける。
「スロー・トレイン・カミング(汽車はゆっくりやってくる)」という、英語の云い回しを知っているかい。
荒野の駅のホームに立って、汽車を待っている。
そこから見ると、汽車は、恐ろしく遠く、豆粒みたいに、小さく見える。
待っている身にすれば、とてもじれったい。
いつになったら、着くのか、と焦る気持ちと、どうせ来ないのではないか、と自棄(やけ)になる気持ちが交ざる。
でも、よく見ていると、汽車は、ゆっくりと、確実に、近づいている。
そして、少し大きくなった、やっと近づいてきたな、と思っていると、とんでもない勢いで、汽車は駅に入り、そして驚くべき速さで走り去ってしまう。
チャンスっていうのは、この汽車みたいなものだ。
いざ、それがやってきた時には、ものすごい早さで去ってしまう。
だから、しっかりと、乗り込めるように準備しておかなければならない。
チャンスは、絶対にやってくる。
今、それがどれほど遠く見えたとしても。