ジェームズ・ボールドウィン「サニーのブルース」(北山克彦 訳)

「ときどきね、それもほんとうにぼくが、世界のもっともそとにいるときなんだけど、ぼくは自分がその内にいること、ぼくがそれとともにいることを、真実感じたんだ、そしてぼくは演奏(プレイ)できた、あるいは演奏などする必要はほんとはなかったんだ、それはただぼくのうちから出てきて、そこに在ったんだ。いま考えると、どういうふうに演奏したものか知らないんだ、でもあの頃、ときどき、人々に酷(むご)いことをしたことは知っている。いや、それはぼくが人々になにかしたなんていうことじゃないんだ――人々は現実のものではなかった、ということなんだ」

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