黒崎政男『カント『純粋理性批判』入門』

カントの問いも、人間の都合で存在しているカテゴリーが、なぜ(それとは無関係に存在しているように思われる)世界を説明認識する場合に、きちんと役に立つのだろうか? というものである。
 そして、カントの答えは、まさに、世界(カントの場合は〈現象〉)の成立そのものに、人間の主観的原理であるカテゴリーがそもそも関与しているから、というものである。世界が、人間とまったく関係のない〈物自体〉のことだったなら、確かにカテゴリーは世界の説明にア・プリオリに妥当するものではないだろう。しかし、世界とはカントによれば、〈現象〉のことであり、この現象は、時間・空間という直観と、カテゴリーによって、そもそも初めて成立するものなのである。