斎藤環『OK? ひきこもりOK!』(「対談 春日武彦 ひきこもり系の精神分析」)

斎藤――対人恐怖の人って、本当は他人のことを怖がっていないんじゃないかと思うときがあるんです。どこか他人も自分と思い込んでいる。他人を本当に他者だと思えたら、むしろ対人恐怖にはならないんじゃないでしょうか。彼らは、相手が自分についてこう思っているんじゃないかと、勝手に自分で推測していくわけでしょう?
春日――そうそう。
斎藤――相手は自分のことをこう思っているに違いないと、どんどん想像していく。それって、相手を自分と同じ人間と思っているわけじゃないですか。
春日――つまり、自分の延長と思っている。
斎藤――だから本質的な他者への畏れはないんじゃないかという気がするんです。他者性の欠如ですね。ひきこもりなんかもそうですね。近所も世間も自分の頭の中の世界ですから、頭でつくった世間のイメージを怖がっているんでしょうね。
春日――そうでしょうね。自分が投影したものだけ、あとは存在しないわけだものね。
斎藤――そのへんの観念の問題ですね。観念的になりやすい。さっきに戻りますけれども、やはり男の問題なんでしょう。