斎藤環『OK? ひきこもりOK!』(「対談 春日武彦 ひきこもり系の精神分析」)

斎藤――何か好きになるにしても、男の場合、好きになったものに変に義理立てしちゃうところがある。一度ファンになった作家やバンドの作品は、本当は気に入らなくても、とりあえず義理があるからと思って買ったり、気に入らない自分をうしろめたく感じたりする。女性の場合は変わり身が早いというか、醒めるとあっさり次に行けるんです。
春日――やっぱり、ずるいじゃない(笑)。
斎藤――一般化していいかどうか、女性は好きだと思うとガーッと突き進んで、飽きるとサーッとひいて、すぐに他に乗り換える。やっぱり枠や縛りをつくらない。男性はファンという枠にしがみついてしまい、その枠内で頑張ろうとする。男は常に、主体としての立ち位置を決めたがるんでしょう。
春日――そのへんが、男にはコレクターがいて、女にいないということでしょうね。
斎藤――そうそう。それですよ。コレクターも半ば義理ですからね。性倒錯もだいたい男で、女にはありませんね。監禁したりしたがるのは男で、女性にはそういう欲望がない。