斎藤環『OK? ひきこもりOK!』(「対談 宮台真司 流動性・バーチャル・コミュニケーション」

宮台――日本ではあらかじめ前提を共有している人間と戯れているだけなのに、「話せば分かる」とか「みんな仲良し」などと言います。まったくの噓です。そこでの「みんな」とはローカリティに過ぎないのに、そのことが隠されている。それはおかしいのです。
 前提を共有しない人間たちが社会にはたくさんいます。前提を共有しなければ、話が通じないのがあたりまえです。そういう相手に話を通じさせることは相当に大変です。しかし、話が通じさせないと、自分がしたいことが実現できないし、場合によっては生きていくのに必要なものさえ手に入れられなくなる。また、広く分布する異質な他者から承認してもらわないと、社会全体の中で自分は自分だという安心感もなかなか得られません。