平木典子『カウンセリングの話』

 「共感性」というのは、(中略)英語ではエンパシィ(empathy)といい、類似語のシンパシィ(sympathy)と区別される。シンパシィは、「同感」とか「同情」と訳される言葉で、相手の心情や感情に取り込まれて同じ気持ちになることをいう。ところが、エンパシィは、確かに相手の気持ちを実感として受け取り、内面から理解することではあるが、巻き込まれてはいない理解のことをいうのである。「この人はこんな人なんだなあ」という理解の仕方は、その人について頭で理解したことであろう。それは、共感でも同感でもない。「この人は、こんなふうに感じているんだなあ」というのが共感で、「この人の感じと私の感じは同じだ」というのが同感とでもいったらいいだろうか。

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