平木典子『カウンセリングの話』

 こう考えてくると、カウンセラーはなんでもわかっている必要はないということも、理解できるであろう。むしろ、わかっている振りをしたりすることが、カウンセリングの中では最も障害になる。
 従って、カウンセラーは、「この人のことを、ここまで、このように理解できている」「この辺は、相手の理解していることと同じように理解できた」などと思っていると同時に、「ここのところは私にはわからない。自分の枠組みとは違うことをいっているらしい」という部分も、いつも自分の中で、はっきり気づいていることが大切になる。
 いいかえれば、決して早わかりをしてはならないということである。カウンセリングのみならず専門家の陥りやすい弊害は、とかく早わかりをして、自分の枠組みで相手を判断してしまうことではないだろうか。