パヴェーゼ『月とかがり火』(米川良夫 訳)

いったい、だれがわたしの出生を明かしてくれることができるだろう。わたしはいくらか世間を見て歩いて来たから、どんな生まれの人間もその性は善良で、優劣を問いにくいことを知っている。しかしまたそのために人間は疲れて、根をおろし、大地と村に還ろうとする――自分の肉が平凡な一つの季節のよみがえりより、さらに価値のある、さらに永続性のある何ものかになるようにと。