セリーヌ『なしくずしの死』(滝田文彦 訳)

 わたしは引きずり込まれはしなかった…… くだらないおしゃべりなんてものはもう真平だった…… いろいろなことを思い出しただけで…… 家でのわいわい騒ぎ!…… 母のよまいごと!…… 言葉でさんざん人に言われる悪口! 糞っ! もうごめんだ! そんなものは山ほど知っている!…… 打ち明け話だの、噓っぱちだのは永久にご免なくらいたらふく食わされてきた!……もうけっこう! そんなのは手押車に何ばいも持っている…… ちょっと考えただけで、胃がもどしそうになってくる…… 連中がなにをさせようとしたってだめだ…… 《たくさん》だ! 口をきかないことなら心得たもんだし、またとない機会だから、徹底的にこいつを利用してやれ…… お涙ちょうだいはごめんだ! まやかそうったってだめだ! やつらの雑談とやらはへどがでる…… たぶんうどんよりももっと悪い…… とはいえ、家のことを考えると、それだけでもうぞっとした……