ゴンブローヴィッチ『フェルディドゥルケ』(米川和夫 訳)

おれは断言する、人の意見が冴えず馬鹿らしく窮屈であればあるほど、われわれにとってそれは意味が重く真実なのである。ちょうど足によく合った靴よりも、窮屈な靴の方がしつこく人を悩ますのと同じことだ。アア、人の判断――きみの理性、心情、性格、きみの体の組織、そうしたものいっさいがっさいに関するこの判断と意見。底なしの淵だ。その淵は、活字によって自分の考えをよそおい、紙の上にのせて人びとのあいだにばらまく大胆者の足もとに口をあけている。アア、紙、紙、活字、活字!