2014-06-13から1日間の記事一覧

ゴンブローヴィッチ『フェルディドゥルケ』(米川和夫 訳)

おれは断言する、人の意見が冴えず馬鹿らしく窮屈であればあるほど、われわれにとってそれは意味が重く真実なのである。ちょうど足によく合った靴よりも、窮屈な靴の方がしつこく人を悩ますのと同じことだ。アア、人の判断――きみの理性、心情、性格、きみの…

ゴンブローヴィッチ『フェルディドゥルケ』(米川和夫 訳)

思い出! 人類にかけられた呪いは、われわれのこの世における実存が固定した一定の体系なぞ、いかなるものにせよ、がまんならぬと思っていること、しかも、固定どころか、万物は流転し、たえまなく動き、形をかえ、そして、一人一人がその人間をほかの一人一…

ゴンブローヴィッチ『フェルディドゥルケ』(米川和夫 訳)

おれは真面目さというものに対しあまりにも真面目な態度をとりすぎたうえ、大人たちの大人らしさをあまりにもまた評価しすぎていたのかもしれない。

ゴンブローヴィッチ『フェルディドゥルケ』(米川和夫 訳)

自然という時計の針は、断固としていて無慈悲だった。最後の歯、親知らずがはえきったとき、おれは考えなければならなかった。いや、考えるまでもなく分かっていた――発育は終わったのだ。避けようにも避けられぬ殺戮のときが来たのだ。使命を終えたさなぎの…

ゴンブローヴィッチ『フェルディドゥルケ』(米川和夫 訳)

……まったく、おれは人生の道のなかばに、暗い森のただなかへと踏み入ったのだ。その森は、また悪いことに、緑だった。 ※太字は出典では傍点

ゴンブローヴィッチ『フェルディドゥルケ』(米川和夫 訳)

火曜日、夜はもうまったくのところ終わってしまったのに、すっかり明けきるにはまだ間(ま)があるという、例のまるで人けのないぼんやりした時刻に、目をさました。不意に目がさめると、すぐに停車場までタクシーをとばそうと考えた。なにしろ、旅に出るのだ…