金井美恵子『夢の時間』

 事務員たちはチラとアイに視線を向け、受話器を置いた係員は、ニコニコ笑いながら、ホテルまでの道をアイに教えた。
 ――この道を右へ、駅と反対に向って真っすぐ行くとつき当りの三叉路がありますから、それを左に曲るんです。それから、アーケードのある通りに出たら、二つ目の四つ角を左に曲って、少し歩くと鏡城跡の堀端に出ます。堀端に出たところで堀にそって左の方へ曲って少し歩くと橋がありますから、それを渡って、左に折れ最初の角(工事中の建物があるから、すぐにわかりますよ)を右に曲って真っすぐ行くと、役所の隣に大きな建物がありますから、すぐわかりますよ。