上田秋成『雨月物語』巻之一、「菊花の約(ちぎり)」

 青々(せい/\)たる春の柳、家園(みその)に種(う)うることなかれ。交(まじは)りは軽薄の人と結ぶことなかれ。楊柳(やうりう)茂りやすくとも、秋の初風の吹くに耐へめや。軽薄の人は交りやすくして亦速(すみや)かなり。楊柳いくたび春に染むれども、軽薄の人は絶えて訪(とむら)ふ日なし。