石川淳『珊瑚』

 機の熟するのを待つといふか。今がそのときだ。この城のあるじは半身不随の寝たつきりで、内外ともに見はなしてゐる。げんに、一服盛つて跡を乗取らうといふ忠臣に不自由しない。そして、その忠臣の中にもわしの一党がひそんでゐるとしたら、どんなものだ。〔……〕