アイスキュロス『アガメムノーン』(久保正彰 訳)

ひとかどの人物とても、幸運の友を、妬み心なく立てることは、
なかなか人間生来の性(さが)がゆるさぬ、
悪しかれと願う邪毒が、心の臓に坐りこみ、
その病をえた男の重荷を、倍にも多くするもの。
おのれの痛みで、おのれ自身の心が晴れず、
他人の幸(さち)さいわいを見つめては、呻きをかさねる。