ヘルダーリン「一八〇〇年の断片的草案」より(木田元 訳)

人間は苫屋に住まい、恥じらいの衣服に包まれている。内気で用心深くもあるからだが、巫女が神火を守るように魂(ガイスト)を守っているからだ。これこそが人間の分別である。だからこそ神々に似たものである人間には、自由が、つまり命令し遂行するより高い力が与えられ、あらゆる財宝のうちもっとも危険なものである言葉が与えられたのだ。創造し、破壊し、没落し、永遠に生きる支配者である母のもとにもどっていって、おのれが何者であるかを証言し、その母からそのもっとも神的なもの、つまりすべてをはぐくむ愛を承(う)け継ぎ学んだことを証言せんがために。