パステルナーク『ドクトル・ジバゴ』(江川卓 訳)

日常の暮しは跡形もなく崩れ去って、あとに残ったのは、およそ非日常的な、ものの役にも立たない力、それこそ一糸まとわぬまで丸裸にされてしまった魂の内奥だけなんだわ。でも、この魂の内奥にとっては何一つ変っていないの。だって、それはいつの時代だって、寒そうにがたがた震えていたんだし、たまたま隣合った同じように丸裸の孤独な魂に、いつも身をすり寄せるようにしていたんですものね。