サイード『パレスチナとは何か』(島弘之 訳)

私たちは、完全に体系的なヴィジョンを有する輪郭のはっきりとした一団の追放者たちであるには、あまりにも急拵えで過去の経験も様々なばかりか、単に憐憫を誘う難民の群れであるためには、あまりにも多弁で悶着を引き起こしすぎもする。私よりも年長のある親類は、少なくとも二十五年間にも亙(わた)って私にこう言い続けてきた。「パレスチナ人とは、ひとつの病いである」と。私は彼の見解を共有するわけではないが、私たちが数々の分類を受けるという事実は、疑いなく私たちの友や敵や私たち自身に多大な困難をもたらしている。