春日武彦『ロマンティックな狂気は存在するか』

 自我漏洩症状というストーリーが、男女関係を含む対人関係や、社会を意識し自分の存在価値や存在意義をはっきりと自覚する(あるいは自問する)ようになる思春期や青年期に好発するのはまことに象徴的である。「他人に疎まれる存在、敬遠される存在」「迫害されるに足る鬱陶しい存在」「努力では補えぬ不可解な要素によって孤立してしまう存在」として、違和感とともに強く自分が浮かび上がってくる(それはときとしてナルチシズムの裏返しである)のがこの時期であることは、精神発達からいっても当然であろう。