春日武彦『ロマンティックな狂気は存在するか』

 簡潔で暗示に富んだ形式を彼らは嬉しがっているように見える。宇宙を司るメカニズムさえもが一行の言葉に圧縮されている。そのことが大切なのである。あたかもそれは芸術における創作態度と共通しているかのように映るが、裏付けに欠けた安直な表現方法において、所詮は低密度の「まがいもの」でしかない。御籤(みくじ)の紙片に印刷された託宣のほうが、よほど説得力に満ちた精神の働きを感じさせる。そしてそんな程度の「作品」に自己充足し、あまつさえ権威者と目する相手へ見せて回るその振る舞いにおいて、狂気が単なる主義主張だとか価値観の差異を示しているのではなく、所詮は精神力の脆弱さを露呈しているに過ぎないように思われてくるのである。