デフォー『ロビンソン・クルーソー』(平井正穂 訳)

 考えてみれば、われわれにはほとんど前途の見通しはつかないものなのだ。そこにまた、世界を造りたもうた偉大な神に安んじて依り頼むいわれもでてくるのである。つまり、神がその被造物である人間をまったく無一物の逆境に陥れるということはなく、どんなひどい場合でも、感謝すべきなにものかを残しておいてくれる、ときには人間が想像する以上に救いの道を身近に設けていてくれる、ということをわれわれは信じてもよいと思うのである。いや、自分たちの破滅のもとと思われたものが、じつは救いの手段となることさえもあるのだ。