蓮實重彦+武満徹『シネマの快楽』

蓮實 白黒映画というのは、その初期から全盛期にかけて、人間の顔をいかに撮りスクリーンに再現するかということに関して、繊細きわまりない確乎たる方法を獲得しえたと思うんです。ところが色彩映画は、顔に関して不毛な試みしか示しえなかった。ゴダールの『カルメン』の素晴らしさは、色彩映画の顔が遂に発見されたというところにつきると思うんです。