三木成夫『胎児の世界』

 塩。これこそ〝海の精〟であり、わたしたち地球に棲む生物のいのちの最後の綱を象るものではないか。いつの日にか、宇宙生物たちが一堂に会するとして地球生物の旗印を求めるとなれば、もはやこれ以外にはありえないといえるほどのものではないか。地球を代表するかれらはみな、その胸に故郷のシンボルマーク〝塩の結晶〟をつけて堂々の行進をおこなうことであろう。それはまさに地球の「関数」ということができる。