バイロン「私は世を愛さなかった」(抄) (阿部知二 訳)

私は世を愛さなかった、世もまた私を――
所詮、敵ならばいさぎよく袂(たもと)を別とう
だが私は信じたい、彼らには裏切られたが
真実(まこと)ある言葉、欺きえぬ希望があり
めぐみ深く、過失(あやまち)の穽(あな)をつくらぬ美徳があると
また、人の悲しみを心から悲しむものもおり
一人か二人かは、見かけと変らぬものもあり
善とは名ばかりでなく、幸福とは夢でない、と。