アポリネール「雨がふる」(全) (堀口大學 訳)

思い出の中でさえも
死んでしまった女たちの声のような
雨がふっている


おお 雨のしずくよ
僕の一生の楽しいめぐりあわせよ
君らもふっている


馬のように暴れまわる
あの雨雲が
響きの市々(まちまち)の別天地をいななきだす


後悔とあざけりが
昔の音楽を泣いているひまに
雨がふるのを聞くがよい


上から下から
おまえを支える絆の糸が
落ちてくるのを聞くがよい